「借金返済」FX取引の預託金詐欺

卒業
被告
病院

主文

1 被告Y1は,別紙認容額一覧表(1)の原告氏名欄記載の各原告に対し,各原告氏名欄に対応する金額欄記載の各金員及びこれに対する平成16年5月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告Y2は,別紙認容額一覧表(2)の原告氏名欄記載の各原告に対し,各原告氏名欄に対応する金額欄記載の各金員及びこれに対する平成16年5月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告Y3は,別紙認容額一覧表(3)の原告氏名欄記載の各原告に対し,各原告氏名欄に対応する金額欄記載の各金員及びこれに対する平成16年5月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用の負担は,別紙訴訟費用負担一覧表記載のとおりとする。
6 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求

被告らは,連帯して,各原告に対し,別紙損害目録の各原告氏名欄に対応する請求額欄記載の各金員及びこれに対する平成16年5月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

本件は,平成16年4月21日に破産宣告を受けた株式会社フォレックスジャパン(以下「フォレックス社」という。)の勧誘により台湾所在のU社の為替証拠金取引の顧客として金員を支出した原告らが,フォレックス社の取締役であった被告らに対し,実際には原告らから預託された金員をもって為替証拠金取引が行われた事実はなく,フォレックス社とU社が共謀して原告らの預託金を詐取したものであり,フォレックス社の取締役であった被告らはこれを認識あるいは放置することにより原告らに損害を与えたなどとして,不法行為又は商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)266条ノ3第1項の責任に基づく損害賠償及び訴状送達の日の翌日である平成16年5月28日からの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求めた事案である。
1 前提事実(証拠掲記のないものは,当事者間に争いがない。)
(1) フォレックス社は,平成12年9月1日に設立された,国際金融情報通信提供サービス業務,外国為替情報通信コンサルタント業務等を目的とする株式会社である。
フォレックス社の資本金は2000万円(設立時は1000万円。)で,株主及びその持株比率は,被告Y1が50パーセント,被告Y2が10パーセント,Fが40パーセントであった(甲全3,7)。
フォレックス社は,平成16年4月21日,那覇地方裁判所において,破産宣告を受けた。
(2) 被告Y1は,フォレックス社の設立発起人として,フォレックス社の設立に関与し,フォレックス社が設立され,破産宣告を受けるまで,フォレックス社の代表取締役であった(甲全3,7)。
被告Y2は,平成13年7月31日,フォレックス社の取締役に就任し,フォレックス社が破産宣告を受けるまでフォレックス社の取締役であった(甲全3,7)。
被告Y3は,フォレックス社の設立時にフォレックス社の取締役に就任し,平成13年7月31日に取締役を辞任した(なお,取締役辞任登記は同年8月3日にされている。)(甲全4,丙全1,被告Y3本人)。
2 争点及び争点に対する当事者の主張
(1) フォレックス社の違法行為の有無
(原告らの主張)
ア フォレックス社が,いわゆる「のみ行為」(相場性を有する取引の仲介業者が,取引の仲介を行わず,自らが取引の当事者となること。)を行い,あるいは適切な取引の仲介をしなかったこと
(ア) フォレックス社は,U社の仲介業者として,顧客を勧誘し,その仲介により,U社と顧客との間に,為替証拠金取引のための預託金を振り込み管理するための管理口座開設契約を締結させ,その後は,U社が顧客の代理ディーラーとして,取引管理口座の管理を行うとともに,顧客の指示に基づき為替市場で為替取引売買を行うこととされていた。
しかし,U社は実際には外国為替取引を行っていたとは認められず,フォレックス社は,いわゆる「のみ行為」を行っていたものである。
この点,被告らは,U社がG銀行やH銀行などとの間で外国為替取引をしている内容の明細書を提出して,取引が存した旨主張する。
しかし,これらの明細書は,U社が各金融機関との間である特定の時期に一定額の限度で外国為替取引をしたことがあることの証拠でしかない。
これらの取引が原告らの投資を始めとしたフォレックス社を経由した投資の運用であったことを裏付ける証拠はなく,ましてやこれらの投資の全額が運用されていたことの証拠も存しないのである。
(イ) また,そもそも,外国為替取引を実際に行っているのであれば,いつ,どのレートでいくらの数量の取引をしたのかということが個別に明らかにされるはずである。
ところが,U社が各顧客に送付した明細書は,各月の最終的な収支の口座残高報告書のみであり,またフォレックス社そのものもU社から同様の収支報告しか受けてなく,個別取引の存否及び内容については全く把握していない。
このような最終的な収支報告のみであれば,全く取引をしていなくとも数字を適当に書き込めば短時間でできるのであり,取引の事実の裏付けには何らなり得ない。
(ウ) さらに,顧客との契約上,外国為替証拠金取引そのものはU社が行うこととされていたが,フォレックス社の破産管財人の報告書によれば,Fが代表者であるI社,F,U社及びフォレックス社の合意により,U社が顧客から集めた資金の運用は,3割をI社,3割をF,U社及びフォレックス社が行うこととされ,実際にフォレックス社も全体の1パーセントないし5パーセントを運用していたとされている。
しかし,上記報告書によっても,実際の各自の運用額は全く不明であり,フォレックス社も直接運用していたというのにもかかわらず,その運用実績さえどこにも明らかになっていない。
(エ) U社は,香港では,現在では無許可の海外業者,詐欺まがいの業者,ペテン業者の1つとしてリストアップされている業者であり,Fは,台湾で以前に投資家から金員を詐取する詐欺行為を行った人物でもある。
フォレックス社が,U社との業務提携前の平成12年4月にU社の信用調査を行ったとされるが,同調査の報告書中にはU社の営業登記項目として投資顧問業の記載があるのに対して,実際にU社が投資顧問業を事業目的に追加したのは平成13年4月16日であり,同調査の時期には疑問も指摘されている。
このような実態から,U社が実際に取引をしていたかどうかは,さらに疑念が大きくなるといえる。
(オ) U社が実際に取引を行っていなかったことは,同社が毎月利益を上げている旨報告していたにもかかわらず,突然破たんし,68.2パーセントもの預り金を返還できなくなったこと,そしてその原因も未だ不明であることからも裏付けられる。
本当に外国為替証拠金取引を継続してきて破たんしたのであれば,いつのどのような投資が失敗して破たんしたのかは容易に説明がつくはずであるにもかかわらず,明らかでない。
(カ) 以上のような事実からすれば,フォレックス社は「のみ行為」を行っていたといえるところ,「のみ行為」が取引市場における公正価格の形成を阻害するのみならず,顧客の正当な利益を害することは明らかである。
フォレックス社は,U社との外国為替証拠金取引を仲介するとして,顧客を勧誘し,顧客から手数料収入を取得する立場にあったのであるから,少なくとも,U社に取引事実を適切に確認するなどして,顧客の委任の趣旨に基づいて適切に外国為替証拠金取引を仲介する義務があったというべきであるが,前記の事実に照らせばこれらの義務を怠ったといえる。
イ 不適切な信託的な運用であったこと
(ア) フォレックス社は,顧客に対して配布している「為替マージン取引説明書」において,顧客がフォレックス社を介して直接U社に個別の売買注文をするシステムであると説明している。
他方,顧客のU社に対する「外国為替マージン売買取引代理人委任同意書」においては,U社に売買を一任する内容であるかのような契約内容となっている。
このように,顧客に対しては,極めて不明確な説明内容になっているが,現実には全く一任売買で,顧客からの売買取引指示は全くなかった。
(イ) 一任売買や無断売買は,商品先物取引においては,平成16年法律第43号による改正前の商品取引所法136条の18第3号(現214条3号)で禁止行為とされている。
一任売買や無断売買は,顧客の自己責任が及ばないところで取引業者によって取引がされることによって,顧客に不測の損害を生じさせかねないのみならず,取引業者が個々の取引の手数料収入により収益を得ているために,顧客の損失によって取引業者の利益のみを得る手数料稼ぎに利用されるおそれが極めて高いからである。
この理は,取引業者が売買成立ごとに一定の手数料収入を得て一般投資家の取引を仲介する外国為替証拠金取引においても当てはまるものである。
(ウ) したがって,フォレックス社の勧誘した取引が,システム上一任売買,無断売買とされていること自体,違法性を有するものというべきである。
ウ 勧誘手段の違法性について
(ア) 断定的判断の提供
外国為替証拠金取引は,日々相場が変動する外国為替市場における投機であって,その動向の予測は極めて困難であり,確実性に乏しいものである。
ところが,フォレックス社においては,顧客勧誘時に,会社ぐるみで,そのことを隠ぺいし,U社が行う為替証拠金取引では,多額の金員をかけて独自に開発したコンピュータプログラムに基づいて取引を行うものであって,確実にもうけることができるとの断定的判断,すなわち虚偽の説明を繰り返してきた。
すなわち,フォレックス社は,その会社紹介のパンフレットにおいて,Fの挨拶として,「FOREX SOFTWAREは研究開発に十数年をかけて数百万米ドルを投じ完成したもので,運用実績として理想的な利益回収率実績がシミュレーション上計上されております。」とし,また,フォレックスソフトウェアメカニズムとして,「指標的中率90%前後を誇るプログラム」と紹介している。
さらに,フォレックス社が発行する「JPF2001」紹介のパンフレットでは,平成13年9月から平成15年7月までの運用実績として「運用率94.6%」とほとんど利益が出ているような説明をし,「運用シミュレーション」として,毎月の利回りが1.6パーセントある前提でシミュレーションをするなどしている。
また,同パンフレットの「Q&A」では,「法律上『元本保証』という文書表現は出来ません。」としつつ,「損切りが発生した場合極めて少額にコントロールする事が出来るノウハウがあります。」,「損切りの場合においても,次回の運用の利益で穴埋め出来る資金運用をしています。」と断定的な記載がされている。
このほか,フォレックス社金沢支店が作成した「Q&A」にも,同様の記載がされているほか,「世界で初めて,90%以上の勝率を実現している為替売買プログラムシステムです。」と説明されている。
フォレックス社社員による顧客に対する説明会でも,同種の説明がされており,JPF2001というコンピュータソフトは,勝率が9割を超えている,10回取引したときに1回はマイナスが出ても,9回はプラスになる,顧客の資金を運用しはじめて29か月間一度もマイナスを出したことがないなどといった説明がされている。
しかしながら,JPF2001というコンピュータソフトが90パーセント以上の確率で当たるということを示す客観的証拠は何ら存在せず,市場の実態からしても,そもそもコンピュータソフトによってそれだけの確率で予測が可能なシステムなど存在し得ないのは自明のことである。
現実にU社は破たんし,未曾有の消費者被害を出している事実からしても,JPF2001というコンピュータソフトに信用性がないことは明らかである。
断定的判断の提供についても,商品先物取引では,平成16年法律第43号による改正前の商品取引所法136条の18第1号(現214条1号)により禁止されている。
それは,市場原則にも反する虚偽の説明とならざるを得ないからであるが,またかかる収益の確実性を勧誘文言とすることによって,消費者の冷静な判断を大きく誤らせるからである。
かかる言動による取引勧誘は詐欺的といってもよい。
外国為替取引の勧誘においても,断定的判断の提供の違法性の本質からすれば,違法な勧誘行為となることは論を待たない。
(イ) 取引内容の説明義務違反
フォレックス社は,顧客勧誘の過程においても,フォレックス社が仲介業者(イントロデューシングブローカー)であって,実際の取引はU社が行うということなどについて,顧客らに十分な説明をしていない。
売買取引の注文はU社宛に出すということをパンフレットなどで説明しているのに,具体的にどのような方法で注文すべきかという説明もない。
ましてやこれがすべて顧客にリスクを転嫁させながらの一任売買であること,U社以外にもI社やF個人,更にはフォレックス社そのものも分担して運用することも全く知らされていなかった。
また,一部の顧客との間では,「外国為替マージン売買取引代理人委任同意書」締結の際の当事者としてU社ではなく,フォレックス社自体が記載されているものもある。
以上のように,フォレックス社は,顧客を勧誘するに当たって,一般的にその取引の内容の実態や危険性などについて全く説明をしておらず,説明義務違反というべきである。
(ウ) 普及員による勧誘の違法性
フォレックス社では,顧客の勧誘に当たっては,一般顧客から普及員を選任し,これらの者が新たな顧客を勧誘すれば手数料を支払うという取引形態を作り出している。
そして,この手数料は,普及員が更に普及員を勧誘することによって下部の普及員に手数料が入るとともに,上部の普及員にも手数料が入る仕組みが作られていることによって高額化し,マルチ商法に近い形態となっている。
商品先物取引においては,その専門性と投機性の高さから,外務員については登録制とされ,主務大臣による監督に服する。
これは違法な勧誘の抑止と,複雑な取引を顧客自身が判断する必要性から求められるものである。
これらと極めて類似した取引である外国為替証拠金取引のための外務員についても,誰でもよいということにならないのは当たり前であって,しかも手数料をインセンティブとしたマルチ商法的な勧誘方法で普及員を採用するのは最もふさわしくないといえる。
フォレックス社は,普及員に対して,異常に高い手数料を支払っており,このような異常に高い手数料の存在が,普及員に顧客の取引経験や資力などの適格性を無視した無謀な勧誘をさせるに至った一因ということができる。
このように,専門性を持たない顧客である普及員に高額な手数料というインセンティブを与えることによって顧客を勧誘するフォレックス社のシステムそのものが,説明義務違反を惹起させるとともに高度な専門性を要する外国為替証拠金取引への参入の不適格者を大量に契約に引き込むことになったのであり,かかる勧誘方法そのものも違法性を帯びているというべきである。
エ 以上のとおり,違法な取引の仕組みがフォレックス社の唯一かつ核心たる業務であり,代表取締役から末端の社員まで当然にこれらの仕組みを前提とした業務を遂行していたのである。
まさに会社ぐるみの違法行為ということができる。
したがって,フォレックス社自体が原告ら顧客に対して,不法行為責任を負う。
(被告らの主張)
ア(ア) 原告らは,まず,U社が外国為替証拠金取引を行っていないことを前提として,フォレックス社には,U社と共謀するか,U社が真実は外国為替証拠金取引を行っていないことを知りながら,これを行っていると称して,原告ら投資家をだまして,預託金名目で多額の出金をさせた不法行為があるなどと主張する。
しかし,U社は,投資家との管理口座開設契約書に基づき,G銀行やH銀行に外国為替直物マージン取引を行うため管理口座を開設し,数々の外国為替証拠金取引を行っていた。
したがって,U社が外国為替証拠金取引を行っていないことを前提とする原告らの主張は,理由がない。
(イ) フォレックス社は,その株主及び取締役構成がU社とは別であり,両会社は別個独立の会社である。
フォレックス社が直接外国為替証拠金取引をするのではなく,取引はU社が行い,フォレックス社はU社への投資を仲介する仲介業務を目的としている会社であり,しかも,フォレックス社はU社の日本における唯一の仲介代理業者である。
そして,フォレックス社はその仲介業務を行った手数料を収入として会社を運営しているのであるから,会社を維持し,発展させるためには,仲介業務を熱心に行い拡大させる必要がある。
フォレックス社は,U社の代理人として原告ら投資家との間で,U社を代理して管理口座開設契約を締結し,外国為替マージン売買取引代理人委任同意書を投資家から取得すべき権限と義務を有している。
したがって,フォレックス社が,U社の代わりに原告ら投資家と契約書を締結したり,原告らのために資料を送付したり,解約の手続を受け付けたりしたのは,U社の仲介業者としての性質とU社の日本国内における唯一の代理人という性格から来るものであり,決して,U社とフォレックス社とが一体となっていたのではない。
イ(ア) フォレックス社の普及員は,原告ら顧客に対し,外国為替証拠金取引について,必ずもうかると称して勧誘行為を行っておらず,被告らは,そのような勧誘について普及員に対し指導したこともない。
逆に,違法な勧誘行為をしないよう厳しく指導していた。
フォレックス社の普及員は,外国為替証拠金取引が投機性の強い,高度な知識を要する経済活動でリスクを伴う危険性の高い行為であることを原告ら顧客に説明した上で,U社に対する預託金の出金に応じてもらっていた。
そして,原告らは,すべて外国為替証拠金取引説明書を精読した旨の確認書に署名捺印している。
フォレックス社では,80歳以上及び20歳未満の顧客には契約を断るなどしてリスクの説明を理解できない可能性のある人との取引を行わないようにしていた。
フォレックス社の普及員が,JPF2001というコンピュータソフトの勝率について説明しているところはあるが,投資そのものについて90パーセント以上の確率でもうかるという説明はしていない。
(イ) フォレックス社は,前記(ア)のとおり,外国為替証拠金取引説明書を示し,外国為替証拠金取引の仕組みや危険性を十分説明した上で,仲介行為を行った。
また,フォレックス社の本社及び各支店において,本社ではほぼ土日を除く毎日,支店では必要に応じて,外国為替証拠金取引の仕組みや危険性に関する説明会(セミナー)を行っていた。
さらには,外国為替証拠金取引を行っていた香港及びマカオにあるU社の見学会と現地における説明会を原告ら投資家に行っていたのであり,投資家に十分な情報を提供してこなかったという原告らの主張は全く的はずれである。
(2) 被告らの個人責任の有無
ア 被告Y1について
(原告らの主張)
(ア) 不法行為責任
a 会社の業務行為そのものが違法であり,これにより他人に損害を与えた場合,会社ぐるみで違法行為を行っているのであるから,会社の機関として業務遂行を行う取締役は,故意又は過失により,他人に損害を与えたものとして,個々には民法709条により,そして会社ぐるみであるから民法719条の共同不法行為により各取締役は連帯して損害賠償責任を負う。
本件では,前記(1)のとおり,フォレックス社が唯一かつ核心たる業務として行った業務が違法な取引であり,代表取締役から末端の社員まで当然に違法な仕組みを前提とした業務を遂行し,会社ぐるみで違法行為を行っていたのであるから,各取締役は民法709条,719条により,原告らに生じた損害を賠償する義務がある。
b 被告Y1は,U社の行う為替証拠金取引の仲介業を行うことを目的とすると称して,フォレックス社を設立したが,U社が為替証拠金取引を行い得る立場にはないことを知りながら,原告らを勧誘して金員を詐取する目的でフォレックス社の設立を行ったものである。
仮に,被告Y1がU社の取引実態を知らなかったとしても,フォレ
ックス社設立当初にU社の信用を十分に調査すべきであったし,また,フォレックス社の行う業務内容からすると,U社の取引実態を容易に把握できたのであるから,勧誘行為を直ちに停止する等すべきであるのに,原告らに対する勧誘行為を繰り返し行ったものである。
また,フォレックス社の勧誘行為は,前記(1)(原告らの主張)のとおり,違法であり,被告Y1は,その代表取締役として,違法な勧誘行為を助長する取引形態を会社組織として立案実施したものとして不法行為責任を負う。
(イ) 商法266条ノ3第1項に基づく責任
本件において,前述のとおり,フォレックス社は違法な行為を行っていたものであるが,各取締役は,かかる違法行為を直ちに中止し,原告らの被害を防止すべきであったのに,これを怠ったものであり,取締役の善管注意義務に違反する任務懈怠行為があったものである。
しかも,被告Y1は,フォレックス社が違法行為をすることを知り,又は知り得べき立場にあったこと,積極的に設立に関与してフォレックス社の代表者になったこと,U社への調査は行っていないか,ずさんなものしかしていないこと,フォレックス社の業務の把握,社員の監督は不十分であること,そもそもJPF2001というあり得ないプログラムを軽信していること等からして,被告Y1には,取締役としての任務を懈怠したことにつき悪意又は重過失がある。
したがって,取締役である被告Y1は,商法266条ノ3第1項に基づく損害賠償責任は免れない。
(被告Y1の主張)
(ア) フォレックス社が違法行為を行っていなかったことについては,前記(1)(被告らの主張)のとおりであり,原告らの主張はその前提を欠くというべきである。
(イ) また,原告らが損害であると主張する金員は,原告らがU社に送金したのであって,フォレックス社自身は受領していない。
仮に,被告らが,原告らから金員を詐取する意図を有していたのであれば,実際に原告らは多額の金員を振り込んでいるのであるから,それ相応の利益が被告らに還元する結果となっているはずである。
しかしながら,フォレックス社が平成12年10月から平成15年11月までに募集した投資金の総額は2億3305万4324米ドル(1ドル110円で換算すると,256億3597万5640円となる。
なお,以下単に「ドル」と表示する場合は「米ドル」を指す。)であるのに対し,被告Y1が受領した報酬額は3年間で2920万円,被告Y2が受領した報酬額は1910万円であるにすぎない。
被告Y1及び被告Y2が欺罔行為を主体的に行ったものとすれば,もっと多額の報酬を得るのが自然である。
また,フォレックス社の各普及員の受領した手数料は,被告ら取締役の報酬をはるかに超えている。
被告らが主体的に欺罔行為を行おうとする意図があったのであれば,当然これら普及員が受領した金員以上の報酬が被告らに支払われているはずであって被告らに欺罔の意図があったとすれば余りにも不自然である。
こうした状況を考えても,被告らに原告らから金員を詐取する意図がなかったことは明らかである。
(ウ) 以上の問題を抜きにしても,会社を設立した行為自体が原告らに対する欺罔行為であるとする原告らの主張には無理があるといわざるを得ない。
会社設立自体に何ら違法はないことはもとより,そもそも会社設立段階,遅くとも会社が設立された段階において,フォレックス社と原告らの間には契約関係はもとよりそもそも相互に面識すらなかったものであり,原告らに対する故意責任を問題にする余地はないものである。
また,原告らの主張する不法行為責任(過失責任)については,過失の内容として勧誘行為を中止すべき義務を挙げているが,上記のとおり,設立段階においては,契約当事者として認識されていない原告らに対する過失を構成することは困難である。
(エ) 勧誘行為の違法については,フォレックス社は,原告らに対し,外国為替取引のリスクを説明し,原告らもそのリスクを十分認識の上投資を決断しているものであり,このことは原告らが外国為替マージン売買取引代理人委任同意書及び為替マージン取引説明書を精読した旨の確認書に署名,押印していることからも明らかである。
また,前記(1)(被告らの主張)イ(ア)のとおり,フォレックス社の普及員は,原告ら顧客に対し,外国為替証拠金取引について,必ずもうかると称して勧誘行為を行っておらず,被告らは,そのような勧誘について普及員に対し指導したこともない。
逆に,違法な勧誘行為をしないよう厳しく指導していた。
フォレックス社の社員は,外国為替証拠金取引が投機性の強い,高度な知識を要する経済活動でリスクを伴う危険性の高い行為であることを原告ら顧客に説明した上で,U社に対する預託金の出金に応じてもらっている。
以上のとおり,原告らの,フォレックス社の普及員が必ずもうかるという勧誘をしていたので被告らに責任があるという主張は事実に反し,理由がない。
(オ) 商法266条ノ3第1項の責任について
会社の設立自体が被告Y1の原告らに対する責任を基礎付けるものでないことは,前記(ウ)のとおりである。
また,U社が外国為替証拠金取引を行い得る立場になかった点を調査すべきとする点についても,そもそもその前提に誤りがあることは,前記(ア)のとおりである。
そして,被告らは,U社がどのような会社か,台湾のリサーチ会社に調査を依頼し,最低限度手形不渡り等による銀行取引停止処分を受けたことがないことや業績が不振でないことを調査し,現地の会社の状況を見分して取引を開始した。
また,U社の取引がされているのか否か疑問が生じた際には,通常では,外国為替証拠金取引についてその取引履歴を公表しないとされている銀行に交渉して,同社が銀行において外国為替証拠金取引を行っている取引履歴の明細書を取得し,同社が外国為替取引を行っていることを確認しているのである。
さらに,フォレックス社の普及員は,原告ら顧客に対し,外国為替証拠金取引について,必ずもうかると称して勧誘行為を行っておらず,被告らは,そのような勧誘について普及員に対し指導したこともない。
逆に,違法な勧誘行為をしないよう厳しく指導していた。
フォレックス社の普及員は,外国為替証拠金取引が投機性の強い,高度な知識を要する経済活動でリスクを伴う危険性の高い行為であることを原告ら顧客に説明した上で,U社に対する預託金の出金に応じてもらっていた。
以上のとおり,被告Y1について,業務執行上の任務懈怠はないし,悪意,重過失もない。
イ 被告Y2について
(原告らの主張)
(ア) 不法行為責任
被告Y2は,取締役に就任するにあたり,フォレックス社が,U社の行う為替証拠金取引を行い得る立場にはなく,原告らを勧誘して金員を詐取する目的で設立されたことを知っていたものであり,フォレックス社が組織的に業務を継続することを共同したものであって,不法行為責任を負う。
仮に,被告Y2がU社の取引実態を知らなかったとしても,同被告はフォレックス社の取引実態を容易に把握できたのであるから,勧誘行為を直ちに停止する等すべきであるのに,原告らに対する勧誘行為を繰り返し行ったものであり,不法行為責任は免れない。
(イ) 商法266条ノ3第1項の責任
フォレックス社は,前記(1)(原告らの主張)のとおり違法行為を行っていたところ,被告Y2は,フォレックス社の違法行為を率先助長し,預託金名下に原告らから多額の金員を支出させ,損害を生じさせたのであって,取締役である被告Y2には損害に関して悪意,重過失があったものとして,商法266条ノ3第1項に基づく責任は免れない。
(被告Y2の主張)
前記ア(被告Y1の主張)のとおりであり,被告Y2も,不法行為責任及び商法266条ノ3第1項の責任は負わない。
ウ 被告Y3について
(原告らの主張)
a 被告Y3は,フォレックス社の設立発起人としてフォレックス社の設立に関与し,設立時から平成13年7月31日までフォレックス社の取締役の地位にあり,フォレックス社の行為に主導的に関わったものであって,フォレックス社の違法行為を率先助長し,預託金名下に原告らから多額の金員を支出させ,損害を生じさせたものであり,不法行為責任を免れない。
b また,上記行為は,本件損害に関して,悪意,重過失があったものとして,商法266条ノ3第1項に基づく責任を免れない。
c なお,被告Y3は,同被告が取締役を辞任した後に契約した原告らについては責任を負わず,また,取締役在任中に契約した原告らについても,辞任後に行った取引については責任を負わない旨主張する。
原告X2,原告X4,原告X17,原告X23の4名については,被告Y3がフォレックス社の取締役在任中に契約に至ったものであって,被告Y3は,前記a,bの責任は免れない。
原告らの契約は,実質的にはフォレックス社に対する信託財産的契約であり,基本契約に基づいて取引が行われ,支払額が増加しても基本契約に変更はないのであって,被告Y3の責任をみるについては,基本契約締結時を基準とすれば足りるというべきである。
したがって,これら原告4名については,前記a,bの責任を負う。
また,上記4名以外の原告らについては,被告Y3がフォレックス社の取締役を辞任した後に取引を行っているが,これらは,被告Y3らが取締役として設立した会社の目的に従い,これを踏襲したフォレックス社の普及員らが勧誘行為を繰り返したことによるのであって,違法な取引制度を作り,これによって多額の顧客を巻き込んで損害を与える組織体制を設立し,その活動によって上記原告らに損害を与えたのであるから,被告Y3は,フォレックス社設立者として,前記a,bの責任を負う。
さらに,被告Y3は,自らフォレックス社の事務所において,原告らの預託金の一部を運用していたものであり,必ず利益を上げるとして顧客を勧誘したコンピュータソフトも人間の判断が関与するものであって,当然にコンピュータソフトのみの判断によって取引が行われるものでないことを知っており,顧客に対する宣伝文言が事実に反することは容易に知り得たものである。
よって,被告Y3は,フォレックス社の中心かつ主要な業務を行い,フォレックス社の業務の主要な任務を果たしていたものであって,フォレックス社が組織的に行っていた集客業務及び多額の損害の発生に関与してきたものである。
したがって,その責任は,被告Y1と変わるところがなく,取締役辞任後の取引に関しても,少なくとも不法行為責任を免れない。
(被告Y3の主張)
(ア) 不法行為責任について
フォレックス社においては,「絶対もうかる」等の勧誘行為は禁止するように社員に指示していたが,万が一そのような勧誘の指示があったとしても,会社としての意思決定に基づくものではないし,フォレックス社が取締役会においてそのような意思決定をした事実はない。
フォレックス社の勧誘方針については,フォレックス社が作成している説明書等にも明確に記載されており,十分なリスクを説明し,かつ顧客からそのリスクについて書面にて同意を得た上で契約を締結している。
なお,フォレックス社においては,その事業について法的に問題がないか調査事務所により調査を行い,また契約書面等についても弁護士にその違法性の有無の調査を依頼するなど十分な確認をした上で業務を開始しており,業務開始に当たり十分調査義務を果たしている。
上記のとおり,被告Y3において,原告らに損失を与えたことに対応する義務違反は存在しない。
また,本件における契約の主体は,原告らとフォレックス社である。
原告らを直接勧誘したのは普及員であり,被告Y3が原告らを直接勧誘した事実はないし,また被告Y3は取締役として会社の意思決定に参加できる立場にあったにすぎず,直接普及員を指揮する立場にもなかった。
このような状況においてされた取引について,直接契約に関与していない被告Y3の行為と,原告らが被った損失との間には因果関係も認められない。
よって,被告Y3が原告らに対して不法行為責任を負うという原告らの主張は理由がない。
(イ) 商法266条ノ3第1項の責任について
a 被告Y3ら取締役は,フォレックス社設立に際し,業務の適法性について専門家に相談するなどして十分な注意義務を果たし,かつ顧客との契約に当たっては,書面によりそのリスクを十分に説明した上で,契約締結をする方針で業務を遂行していたものであり,その職務を行うに際し,善良なる管理者としての義務を十分に果たしている。
原告らは,あたかも被告らがフォレックス社を設立し,顧客らをだ
まして金員を巻き上げるシステムを作り上げたように主張しているが,そのようなシステムを作り上げたのであれば当然ながらそれ相応の報酬を取得しているはずである。
この点,被告らが取締役就任期間中に得た報酬は,代表取締役であ
る被告Y1において2年数か月間において2920万円であり,被告Y3においては11か月間の間に200万円にも満たない。
このような過少な報酬のために多額の金員を騙取したと考えるのは不合理であり,原告らの主張は動機の面から考えても理由が欠けていると考えるべきである。
b 取締役辞任後に取引に入った者との関係について
原告らのうち,原告X2,原告X4,原告X17及び原告X23を
除く34名の原告については,被告Y3がフォレックス社の取締役を辞任した後(なお,原告X2については被告Y3辞任後その登記完了前に契約を締結している。)に取引に入っている。
これら,被告Y3がフォレックス社の取締役を辞任した後に取引に
入った原告らについては,そもそも被告Y3の職務の義務違反との因果関係を観念し得ず,若しくは観念するのは相当でなく,請求は失当である。
c 取締役辞任前に取引に入った者について
被告Y3がフォレックス社の取締役辞任前に取引に入った原告らに
ついても,あくまで最初の契約日が取締役辞任前であったに過ぎず,実際の投資は辞任後に行われているものもある。
これらについては,前記bと同様に因果関係を観念し得ない若しくは因果関係を認めるのは相当ではないというべきである。
また,被告Y3は,フォレックス社設立後最初の決算期である平成
13年8月31日以前の同年7月31日に取締役を辞任しており,決算に備えて会社の帳簿類や業務内容を精査する以前にその職務を終えているのであるから,そもそもU社の業務内容についても不審を抱くことは困難であったのであり,被告Y3には原告らの損害について責任はない。
そもそも,原告らの損害は,基本取引契約を締結したことによるも
のではない。
基本取引契約を締結したこと自体が損害であれば,原告全員の損害額は同一額になるはずである。
このように考えれば,仮にフォレックス社の取締役に何らかの責任が認められるとした場合でも,その責任の対象は基本取引契約を締結させられたことではなく,その後実際に投資行為を行わせたことに向けられると考えるのが相当である。
(a) 原告X2について
原告X2については,同原告が入金した金額のうち,平成13年8月3日以前に入金されたのは,同月1日の3万ドルのみであり,その余については被告Y3の辞任後のものである。
(b) 原告X4について
原告X4については,平成13年8月3日以前に入金されたのは,同年1月18日の2万ドルと,同年6月4日の3万ドルのみである。
(c) 原告X17について
原告X17については,同原告は最初に入金した日として,平成13年2月8日を記載し,かつ入金総額を16万ドルとする一方で,最初の取引金額を2万ドルとしている。この点,平成13年8月3日以前にいくら入金されているか明らかにされておらず,立証は不十分というべきである。
(d) 原告X23について
原告X23については,平成13年8月3日以前に入金されたのは,同年2月9日の118万3224円と同年7月27日の107万7223円の合計226万0447円であり,その余の金額は被告Y3の辞任後の入金である。
(3) 損害
(原告らの主張)
原告らが被った損害は,別紙損害目録中損害金欄記載のとおりである。
各原告は,原告ら訴訟代理人に対し,損害額の1割を報酬として支払う旨約した。弁護料は,別紙損害目録中弁護料欄記載のとおりである。
よって,原告らの請求額は,別紙損害目録中請求額欄記載のとおりである。
(被告らの主張)
原告らの主張は争う。
なお,原告らは,フォレックス社の破産手続において,破産管財人に対し,破産債権の届出をしたが,届出債権額の一部については破産管財人から異議が出され,破産管財人が認めた限度で破産債権が確定し,確定債権額に基づいて一部配当を受けている。
したがって,破産手続における確定債権額をもって原告らの損害とすべきであるし,また,フォレックス社の破産手続において配当を受けた金額については,損害額から控除すべきである。
原告らは,別紙「フォレックス破産事件 配当額及び配当額を差し引いた損害額表」記載のとおり,フォレックス社の破産手続において,破産債権額が確定し,破産管財人から中間配当及び最後配当を受けている。
したがって,仮に被告らが何らかの責任を負うとしても,原告らの損害は,同表中差引損害額欄記載のとおりである。
また,原告X5及び原告X32については,フォレックス社の破産手続において,破産債権者として届け出ていない。
そして,原告X6は,同破産手続において,確定債権額はなしと確定している。
これら原告3名は,破産債権の届出をしないか,確定債権額はないと確定している。
したがって,これら原告3名は,フォレックス社から損害を受けておらず,被告らに対する請求権も発生していないというべきである。
(被告Y3の主張)
被告Y3がフォレックス社取締役在任中にフォレックス社と取引を開始した4名の原告らについては,在任中の投資額が明らかにされておらず,被告Y3との関係では損害の立証がされていないというべきである。
また,上記4名の原告らについては,フォレックス社の破産手続において,届出債権中,届出額の半額以上の債権について破産管財人から異議が出されており(特に原告X4については,実に9割8分に及ぶ債権について異議が出されている。),同原告らもこの破産管財人からの異議に対して債権確定のための訴訟を提起していない。
このことからすると,これら4名の原告らについては,相当額の配当金を受領していたと考えるのが相当であり,少なくとも被告Y3の取締役在任中に投資された金額については,配当により既に回収されているものと推定され,被告Y3の関係では損害自体ないと考えるのが合理的である。

第3 当裁判所の判断

1 証拠(各項掲記のものの外,被告Y1本人,被告Y3本人,甲全7,乙全16,18,丙全1)及び弁論の全趣旨によれば以下の各事実が認められる。
(1) フォレックス社設立の経緯
ア 被告Y1の叔父であるJは,平成12年ころ,Fが代表者であるI社と提携して,外国為替売買仲介業等を行う会社を設立しようとしたが,Jは,既に外国為替取引を行う株式会社Kという会社を経営していたため,新しい会社を設立することができないとのことで,同年7月ころ,被告Y1にFを紹介し,被告Y1に外国為替取引を行う会社を設立するよう勧めた。
Jの紹介では,Fは,外国為替取引を行って20年になるが,その20年のデータを蓄積,分析し,売り買い指数を出すというコンピュータソフトを開発した技術者であるということであった。
イ 被告Y1は,フォレックス社設立以前には外国為替証拠金取引の経験がなく,フォレックス社を設立しても,外国為替証拠金取引を行うためには銀行に多額の保証金を積み立てる必要が生じることから,Fから,台湾等で外国為替証拠金取引の実績がある会社としてU社を紹介してもらった。
その際,被告Y1は,Jから,新会社設立のための準備として,同人が調査会社に依頼して行ったU社の信用調査に係る海外企業調査報告書(乙全14)も受け取った。
その報告書には,U社について,現在まで手形取引停止の処分記録がないが,詳細な会社の運営状況及び経営効率は分からない,U社と取引する際には慎重にする方がよい等の記載がなされていた。
被告Y1は,Jの話や海外企業調査報告書等を参考にし,平成12年9月1日に,Fとフォレックス社を設立することとなった。
もっとも,被告Y1は,Jから紹介を受けたFについては,Jからの説明以上には特に調査等をしていない。
被告Y1らがフォレックス社を設立した際の資本金1000万円については,被告Y1が出資したが,設立発起人には,被告Y1の他に,Fと,被告Y3の3名が就任し,設立後は,被告Y1が代表取締役に,Fと被告Y3が取締役に就任した。
当初は,被告Y2が取締役になるはずであったが,設立当時,被告Y2は別会社を経営していたため,フォレックス社の取締役になることができず,当時,株式会社Kで稼働しており,英語が堪能で,Jの通訳兼運転手をしていた被告Y3がJの指示により,フォレックス社の取締役に就任した。
上記のとおり,被告Y1は,1000万円を出資したが,その後,F及び被告Y2から株式の割合に応じた額を受け取っている。
ウ フォレックス社は,平成12年9月10日,I社との間で,共同で外国為替売買操作コンピュータシステム(JPF2001)に関する開発業務を行うことを合意し,技術共同開発契約を締結し,さらに,同月18日,I社との間で,JPF2001の日本総代理店となること等を内容とする契約を締結した。
フォレックス社は,前記イのとおり,被告Y1が外国為替証拠金取引を行ったことがなかったことから,Fから,香港,マカオ,台湾において外国為替証拠金取引の実績があるというU社を紹介され,同年11月10日,U社との間で,外国為替証拠金取引に関する仲介代理業務契約を締結した(甲全5,乙全12の1及び2,13)。
その契約内容は,要旨,フォレックス社が,顧客である個人投資家に対し,他の外国為替証拠金取引業者であるU社を紹介し(いわゆるイントロデューシング・ブローカー(取次媒介型)),顧客は,フォレックス社を通じてU社と口座開設契約を締結してU社に直接投資資金を送金し,U社は集めた資金を為替取引で運用し,フォレックス社及びU社は手数料収入を得るというものであった。
手数料収入は,1回の取引(売り,買いの一往復。以下同様。)につき出資口数1口(1枚)1万ドル当たり160ドルで,配分割合は,フォレックス社が100ドル,U社が60ドルとなっていた(その後,手数料収入額及び配分割合は数回変更されている。)。
そして,顧客から集めた資金は,I社が3,FとU社及びフォレックス社が3の割合で運用し,残りの3を保証金として残し,1を顧客が契約を解除した場合の返戻金に充てるための資金として管理されることになっていた。
(2) フォレックス社の業務内容
ア フォレックス社は,セミナーや説明会等で顧客を集め,取引をすることを決めた顧客は,G銀行,H銀行のU社の口座に証拠金を送金し,その証拠金をもとに,U社が外国為替証拠金取引を行うものとされていた。
この際,運用成績の如何に関わらず,U社とフォレックス社は,1回の取引ごとに所定の手数料を取得し,U社はフォレックス社が受領する分のみフォレックス社に送金するというシステムとなっていた。
イ フォレックス社は,受領した手数料を,さらに,実績に応じた所定の計算方法により,普及員に対して支払っていた。
フォレックス社における普及員のシステムとして,1普及員であるAを頂点として,その下に普及員であるB,Bの下に普及員であるC,Cの下に普及員であるD,Dの下に顧客であるEが付くシステム(A,B,Cについては各顧客との個別の結びつきはない。)や,2それぞれ普及員であるA,B,Cは,Aを頂点としてその下にB,Cという階級を持つが,各自顧客であるEを持つことができるというシステムなどがあった。
1のシステムにおいては,Dに対する手数料は,顧客Eの出資口数につき,為替取引1回当たり1500円,Cに対する手数料は,総顧客の出資口数につき,為替取引1回当たり1500円,Bに対する手数料は,総顧客の出資口数につき,為替取引1回当たり1250円,Aに対する手数料は,総顧客の出資口数につき,為替取引1回当たり750円が支払われる仕組みとなっていた。
また,2のシステムにおいては,A,B,Cがそれぞれ直接持っている顧客との関係では,各々自分の顧客Eの出資口数につき,為替取引1回当たり2000円の手数料が支払われ,Bは,B配下のCが持つ顧客の出資口数につき,為替取引1回当たり1000円の手数料が,Aは,A配下のB,Cが持つ顧客の出資口数につき,為替取引1回当たり1000円の手数料が支払われる仕組みとなっていた。
この普及員システムにより,フォレックス社は,設立当初から,顧客数をほぼ毎月10パーセント以上増加させ,平成13年12月の契約顧客数が1411名であったのが,平成14年12月時点で3587名,平成15年9月時点では5916名となっていた。
ウ フォレックス社は,前記イのとおり,普及員というシステムにより,顧客数を増大させていったが,具体的な顧客の勧誘方法は以下のとおりであった。
普及員は,自己の知り合い等を誘い,フォレックス社の本社や支店等で行われる説明会やセミナーに連れて行き,そこで,フォレックス社の社員らが取引についての説明をしていた。
そこでは,フォレックス社の社員により,投資商品であるから元本保証はなく,損が出ることもあるなどの説明はあるものの,4年間の売り買いのシミュレーションの結果,為替相場の波を当てた勝率が90パーセントを超えている,10回取引すれば1回はマイナスが出ても,残り9回はプラスになる,例えば1回の損失を100ドルだったと仮定して,900ドルの利益が出たとして,結果,100ドルの損失を補って更に利益として800ドル残すことができる,1口1万ドル投資した顧客が過去1年間で受け取った利益は,月平均2.02パーセント,年率で24.3パーセントくらいになる,29か月間,一度もマイナスを出したことがないなどとJPF2001がいかに優秀であるか,また,顧客がいかに利益を得ているかについての説明がされ,顧客の勧誘がされていた(原告X4本人,原告X1本人,甲全1,13ないし15)。
また,フォレックス社が顧客に対して配布しているパンフレット(甲全11)や事業説明書(甲全12)においてもフォレックス社とI社の開発した外国為替売買コンピュータプログラムが指標的中率90パーセント前後を誇るなどとその優位性や運用実績を強く表示したり,法律上元本保証という表現はできないものの,損切りの場合においても,次回の運用の利益で穴埋めできる資金運用をしていますなどと,あたかも顧客に損失が発生しないかのような説明内容となっていた。
エ 顧客らは,前記ウの説明会等でフォレックス社から勧誘を受け,投資をすることにした場合,外国為替マージン売買取引代理人委任同意書(乙全6)に署名,押印をし,フォレックス社に対して提出した。
外国為替マージン売買取引代理人委任同意書は,顧客が,U社を代理ディーラーとして外国為替マージン売買取引管理口座を開設し,U社に外国為替マージン取引売買実行権限を委任し,U社に開設口座の外国為替マージン売買取引の代理人として,為替マージンスポットマーケットの取引を行う権限を委任する,顧客は,U社が行うすべての為替取引売買指令の実行に同意し,U社は顧客が被るいかなる損失,損害,費用,課金及び経費についても責任を負わない,顧客は代理人U社が決定した買入れ又は売出しのリスクを負担する等の内容となっている(乙全6)。
もっとも,平成13年3月ころまでは,外国為替マージン売買取引代理人委任同意書は,U社を代理ディーラーとして外国為替マージン売買取引管理口座を開設し,フォレックス社に為替マージン取引売買の実行権限を委任し,フォレックス社に開設口座の外国為替マージン売買取引の代理人として,為替マージンスポットマーケットの取引を行う権限を委任するという内容となっていた(乙2,4,17,23の各1の1)が,フォレックス社は,実際に取引を行うU社に対する委任になっていないとの顧問弁護士の指摘を受け,外国為替マージン売買取引代理人委任同意書の内容を変更した(被告Y1本人)。
また,外国為替マージン売買取引代理人委任同意書と同時に渡される「為替マージン取引」のリスクについての開示書面には,元本及び利益が保証されているものではない,為替マージン取引は,総取引金額に対して少額の委託証拠金で取引を行うことができ,多額の利益を得ることもあるが,逆に,為替相場の状況によっては損失を被る可能性もある,その損失額は,預託した委託証拠金全額の損失となる場合もあるなどと記載されており,顧客はこれを精読した旨の確認書にも署名,押印をしてフォレックス社に対して提出することとなっていた(乙1ないし28の各1の1,各1の2,30ないし38の各1の1,各1の2)。
オ フォレックス社は,前記のような形態で顧客を集め,顧客は,U社名義の口座に証拠金を送金し,U社から,フォレックス社に対し,アカウントディーテールという日々の報告書(甲全10)や,G銀行やH銀行の運用資料(乙全3の1ないし12,4の1ないし15)が送られていた。
また,被告Y3は,平成13年1月から,Jの指示で,U社の代理人として,ディーラーとしての活動をするようにもなり,顧客がU社の口座に送金した証拠金の一部について,外国為替証拠金取引を行っていた(丙全2の1ないし8,丙全5,6,7の1ないし8,丙全8)。
(3) 破たんに至る経緯
ア フォレックス社は,顧客を毎月増加させ,また,顧客に対しては,フォレックス社設立当初から,U社から顧客への配当がされるなどしていた。
しかし,Fは,平成15年9月30日,沖縄タイムス紙に「謹告
(株)フォレックスジャパンの顧客・取引先の皆様へ」と題する,Fが同月1日付けでフォレックス社の取締役を辞任した,I社がフォレックス社との間で締結していたJPF2001の使用許諾契約を含むすべての契約関係を解除した,今後,Fはフォレックス社の営業行為には一切関係ない旨を記載した広告を掲載した。
その後,Fは,フォレックス社の顧客1000名余に対して,1U社がFの承諾なしに勝手にJPF2001を使用している,2U社が外国為替取引の免許を有しない非合法会社であるのに,フォレックス社はこのような非合法会社と業務提携をしている,3投資金が増加しているにもかかわらず,取引が減少しているのは,顧客の投資金を海外に逃避させているのではないかとの疑いがある,4投資金が凍結された場合,Jや被告Y1に投資金の返還や賠償能力があるか疑問である等という内容の同年10月10日付け「株式会社フォレックス・ジャパンへの投資家の皆様へ」と題する文書を発出した(甲全2)。
これらの結果,顧客は,U社に対して投資金の回収を求め,約20億円の解約,出金の要求があった。
U社は,Fの上記広告,文書等により,多額の出金を余儀なくされ,平成15年11月5日付けの文書で,顧客に対し,同年10月中に予期せぬ為替相場の変動の連続により,多大な損失金が発生した,したがって,同月末日をもって,運用を停止し,残金については弁護士に法的管理を依頼して同年11月6日付けで凍結し,準備ができ次第速やかに返金する旨連絡をした(甲全10)。
イ フォレックス社は,平成15年11月7日,L弁護士らに対し,U社破たん後の処理を委任した。
L弁護士らは,U社との交渉の結果,同年12月5日に,1U社は3割相当の資産を無条件で返金する,2返金額は3割ではなく,最大限可能な31.8パーセントとする,3顧客の同意書等の送付作業,返金口座の確認作業等の事務作業はフォレックス社が協力して行う,4返金作業はU社の代理人弁護士が行うことなどを合意した。
ウ その後,顧客の一部から札幌地方裁判所に対し,フォレックス社を被告とする損害賠償請求訴訟が提起されたが,フォレックス社は対応できず,欠席判決が言い渡され,同判決を債務名義としてフォレックス社の預金が差し押さえられるなどしたため,フォレックス社は,平成16年3月25日,那覇地方裁判所に対し,破産手続開始の申立てをした。
2 争点(1)(フォレックス社の違法行為の有無)について
(1) 原告らは,U社が実際には外国為替証拠金取引を行っていたとは認められないとして,フォレックス社が「のみ行為」を行っていたと主張する。
この点,確かに,フォレックス社が仲介した顧客からの投資について,U社が,具体的にいつ,いくらの外国為替証拠金取引をしていたのかを明らかにする詳細な報告書はなく,また,前記1(1)ウのとおり,顧客から集めた資金はI社が3,F,U社及びフォレックス社が3の割合で各運用し,残りの3を保証金とするなどとしているものの,本件全証拠によっても,実際にどのような割合で運用されていたのかについては明らかとなっていない。
また,フォレックス社の破産管財人の調査によれば,Fが2度にわたり投資家から金員を詐取する詐欺事件を犯したと報道されていることや,香港においてU社が不適切又は違法な活動に従事している疑いがあると思料するに足る情報に基づき,平成16年5月より,香港の証券先物取引監察委員会のホームページにおいて,警告リストにリストアップされるなどしていることがうかがわれ(甲全7),さらに,前記1(3)アのようなFやU社の言動にも不自然な点が認められる。
しかしながら,前記1(2)オのとおり,フォレックス社に対しては,U社から日々の報告書(アカウントディーテール)や,G銀行やH銀行の運用資料が送付されており,また,被告Y3もU社の代理人として,外国為替証拠金取引のディーラーの仕事を現に行っていたものである。
そして,F及びU社が,具体的にどのような違法行為等を行ったのかについて認めるに足る証拠もない。
これらからすると,U社が顧客からの投資資金を具体的にどのように運用していたかは,必ずしも明らかではないものの,U社が外国為替証拠金取引を行っていなかったとは認められず,したがって,フォレックス社がいわゆる「のみ行為」を行っていたとも認められない。
(2) また,前記1(2)エのとおり,顧客は,U社に対して外国為替証拠金取引売買を一任する内容となっているところ,原告らは,このような一任売買は違法性を有する旨主張する。
しかしながら,フォレックス社が破たんするまで,外国為替証拠金取引については,明確な法的規制はされていなかったのであり,本件のような信託的な運用について原告らの指摘のような問題点が存するとしても,これをもって,同売買を一任するという内容それ自体が違法となるとまでは認められない。
(3)ア 他方,フォレックス社は,顧客を勧誘するに当たり,前記1(2)ウのとおり,セミナーやパンフレット等において,JPF2001の優秀性を強調し,為替相場の波を当てた勝率が9割を超えており,10回の取引のうち,1回は負けたとしても,残りの9回で勝てる,年率で24.3パーセントくらいになるなどと説明している。
そして,被告Y1や被告Y3は,その各本人尋問において,JPF2001が上記のように高い勝率で為替相場の波を当てる優れたコンピュータソフトであることを実際に確認したものであり,現在も信用している,U社の破たんの原因もJPF2001が使用できなくなったからである旨供述する。
さらに,フォレックス社のパンフレット(甲全11)には,JPF2001(同パンフレットでは,フォレックスソフトウェアとして紹介されているが,同一のものと認められる。)について,大要以下のような説明がされている。
すなわち,JPF2001は,10年以上の開発期間を経て,数百万ドルの資金を台湾,香港及びカナダの研究開発センターに費やし,ほかのコンピュータ売買プログラムとは一線を画する外国為替売買取引コンピュータシステムの開発に成功したものである。
同プログラムが使用するインターバンク市場の気配値(建値のすべて)はフォレックス社のデータベースに暗号化が施された特殊なファイル形式で記録保存されており,ドル円に至っては10年間のデータ量を誇っている。
これら各データは,24時間リアルタイムに蓄積され,同時にその監視,分析が行われている。
同プログラムのメインページに表示される最終的な売買指標が発信される過程では,複雑な変動分析システムがその役割を担っている。
通貨データをプログラム内部では12の分析グループに振り分け分析を実行する。
各グループは4つのグループを内包しており,内部では更に12の領域に振り分けられ,プログラミングされた各自の命令を実行しながら分析を行う。
このように最小領域の単位でいうと合計576の分析ユニットを持ち,各自がインターバンクの建値をリアルタイムで取り込みプログラム上位へその最新の分析結果を伝達する仕組みになっている。
さらに,上記分析過程に加え,為替相場の瞬間値における上昇,下落の勢いを示すとともにその予想を表示する機能を有し,この分析結果は,上記の分析結果とも統合され,メインページの売買指標に反映される仕組みになっている。
この機能は非常に的中率が高く,本プログラムの性能の中でも最も特徴的なものといえる。
しかしながら,外国為替相場は,単に経済的な要因のみならず,政治的要因をはじめ,世界中の事象,事変等の多種多様な要因によって変動するものと解されるところ,前記パンフレット記載のJPF2001の紹介をみても,JPF2001が,このような相場の変動をいかに把握,分析するのかは不明というほかなく,どのようにして90パーセントを超える高確率で相場の変動を的確に予測するのか,その仕組みは何ら明らかになっていない。
また,被告Y1や被告Y3の各本人尋問における供述内容をみても,JPF2001がいかにしてその主張のような高い確率で為替相場の波を当てるのかについて十分な説明はされていない。
これらからすれば,JPF2001が,フォレックス社がいうような高度の性能を有するソフトであるとは到底認められず,また,これを信用しているとする被告Y1や被告Y3の供述も採用できない。
したがって,フォレックス社がいうような高度の性能を有するものとは認められないJPF2001について,前記1(2)ウのように,ことさらその優秀性を強調して顧客を勧誘するフォレックス社の行為は詐欺的な勧誘方法であるというべきである。
なお,原告らの一部には,JPF2001について直接説明を受けていたとは認めるに足りない者も存在する(甲5,13,19,14,27,28,30の各1)が,前記のようにフォレックス社のパンフレット等にはJPF2001の優秀性についての記載がされているのであり,上記直接説明を受けていない原告らについても,フォレックス社の勧誘方法が詐欺的であったとの上記認定を左右するものではない。
イ 加えて,フォレックス社の説明会等で配布されたパンフレットでは,損切りの場合においても,次回の運用の利益で穴埋めできる資金運用をしていると説明するなど,顧客にとっては,損失が発生しないのではないかと誤解するような内容となっている。
また,顧客に対する説明についても,前記1(2)エのとおり,平成13年3月ころまでの外国為替マージン売買取引代理人委任同意書は,実際は,フォレックス社自身が取引を行っていたものではなく,U社へ仲介を行っていたにもかかわらず,これと異なる,フォレックス社が取引権限の委任を受ける内容となっていた。
しかも,フォレックス社の説明会では,具体的にどのような業者に委託するのかについての説明はされておらず,専門家に任せるという趣旨にとどまっている(甲全1)。
これらからすると,フォレックス社が顧客を勧誘する際に,具体的に取引の内容やその危険性について説明を行っていたものとは認められない。
この点,被告らは,元本保証でないことは明示していた,為替マージン取引説明書を精読した旨の確認書にも署名押印をしている,普及員に対しても禁止行為を定め,必ず利益が得られると誤解されるような断定的判断を提供して勧誘すること等は禁止していたなどと主張する。
確かに,フォレックス社の説明会での説明の際にも元本保証はないことは何度も述べられており(甲全1),その他の書面にも元本保証がないこと等は記載されてはいる。
しかしながら,前記1(2)ウで認定したようなフォレックス社の説明(甲全1)や,前記パンフレット等の記載内容に照らし,フォレックス社が危険性について十分な説明をしていたとは到底認められない。
ウ 以上によれば,具体的に取引の内容やその危険性について説明を行うことなく,フォレックス社がいうような高度の性能を有するコンピュータソフトとは認められないJPF2001について,ことさらその優秀性を強調して,あたかもフォレックス社が仲介して行う外国為替証拠金取引が危険ではないかのように装って行った勧誘方法は,詐欺的な勧誘方法であって,違法であるというべきである。
3 争点(2)(取締役個人の責任の有無)について
(1) 被告Y1について
前記2(3)のとおり,フォレックス社には,顧客を勧誘する行為について違法性が認められるところ,被告Y1は設立時から,フォレックス社の代表取締役であった者である。
そして,フォレックス社の勧誘行為は,多数の普及員による勧誘と,説明会やセミナーあるいはパンフレット等による説明によるところが大きいところ,被告Y1には,フォレックス社の代表取締役として,フォレックス社が違法な勧誘行為をしないようにする業務上の注意義務が認められる。
にもかかわらず,被告Y1は,普及員やフォレックス社の社員が違法な勧誘をしていることを止めなかったばかりではなく,前記のとおりフォレックス社がいうような高度の性能を有するものとは認められないソフトウェアであるJPF2001の性能を強調するパンフレットに,フォレックス社の代表取締役として名を連ねる(甲全11)など,積極的に違法な勧誘行為に加担したものと認められる。
したがって,フォレックス社の代表取締役である被告Y1には,上記注意義務の懈怠について悪意又は重大な過失が認められ,商法266条ノ3第1項に基づき,フォレックス社の勧誘によってU社に投資をした原告らに対して損害賠償義務を負うというべきである。
(2) 被告Y2について
前記2(3)のとおり,フォレックス社には,顧客を勧誘する行為について違法性が認められるところ,被告Y2は,平成13年7月31日からフォレックス社の取締役であった者である。
そうすると,被告Y2には,フォレックス社の取締役としてフォレックス社が違法な勧誘行為をしないようにする業務上の注意義務が認められる。
にもかかわらず,被告Y2は,普及員やフォレックス社の社員が違法な勧誘をしていることを止めなかったばかりでなく,前記のとおりフォレックス社がいうような高度の性能を有するものとは認められないソフトウェアであるJPF2001の性能を強調するパンフレットに,フォレックス社の常務取締役として名を連ねる(甲全11)など,積極的に違法な勧誘行為に加担したものと認められる。
したがって,フォレックス社の取締役である被告Y2には,取締役として在任中にフォレックス社の勧誘によってU社に投資をした原告らに対する関係で,上記注意義務の懈怠について悪意又は重大な過失が認められ,商法266条ノ3第1項に基づき,同原告らに対して損害賠償義務を負うというべきである。
他方,被告Y2がフォレックス社の取締役に就任する以前に取引を開始した原告X2(同原告については,実際の投資の開始は被告Y2が取締役に就任した直後の平成13年8月1日である(甲2の1)が,外国為替マージン売買取引代理人委任同意書(乙2の1の1)や為替マージン取引説明書を精読した旨の確認書(乙2の1の2)の作成日付は同年3月5日であり,被告Y2の取締役就任前に勧誘を受け,取引関係に入るに至ったものと認められる。),原告X4,原告X17及び原告X23(甲全14,甲2,4,17,23の各1,乙2,4,17,23の各1の1,各1の2)については,被告Y2が取締役に就任している期間に,フォレックス社の社員や普及員等から違法な勧誘を受けて更に投資を行い,損害が拡大したかどうかについてまでは具体的に明らかではないから,被告Y2にこれら原告らに対する勧誘行為の責任を認めることはできない。
(3) 被告Y3について
前記2(3)のとおり,フォレックス社には顧客を勧誘する行為について違法性が認められるところ,被告Y3は,フォレックス社設立時から,平成13年7月31日までフォレックス社の取締役であった者である。
そうすると,被告Y3には,フォレックス社の取締役としてフォレックス社が違法な勧誘行為をしないようにする業務上の注意義務が認められる。
にもかかわらず,被告Y3は,普及員やフォレックス社の社員が違法な勧誘をしていることを止めなかったなど,この義務を果たしていない。
したがって,フォレックス社の取締役である被告Y3には,取締役として在任中にフォレックス社の勧誘によってU社に投資をした原告ら,すなわち原告X2(同原告について,被告Y3がフォレックス社の取締役在任中であった平成13年3月5日にはフォレックス社からの勧誘を受け,取引関係に入るに至っていたと認められることは,前述のとおりである。),原告X4,原告X17及び原告X23に対する関係で,上記注意義務の懈怠について悪意又は重大な過失が認められ,商法266条ノ3第1項に基づき,同原告らに対して損害賠償義務を負うというべきである。
他方,被告Y3がフォレックス社の取締役退任後に取引関係に入るに至った原告らに対しては,被告Y3はフォレックス社の取締役としての責任は負わないと認めるのが相当である。
この点,原告らは,フォレックス社は違法な目的で設立され,また,これを踏襲して,勧誘行為を繰り返したのであり,被告Y3は,違法な取引制度を作り,これによって多額の顧客を巻き込んで損害を与える組織体制を設立したものであって,原告らはその活動によって損害を被ったのであるから,被告Y3はフォレックス社設立者として,フォレックス社の取締役退任後に取引関係に入るに至った原告らに対しても,取締役としての責任を負う旨主張する。
しかしながら,前記2(3)のとおり,顧客らの勧誘行為についてフォレックス社の違法行為が認められるところ,被告Y3が違法な勧誘方法を作り出したとまでは認められず,また,フォレックス社が違法な目的で設立されたものと認めるに足る的確な証拠も存しないから,取締役辞任後に取引関係に入った原告らについても被告Y3が責任を負うとする原告らの上記主張は採用できない。
他方,被告Y3は,同被告が取締役在任中に取引関係に入った原告らのうち,被告Y3が取締役を辞任した後の取引については責任を負わない旨主張する。
しかしながら,被告Y3が取締役在任中に取引関係に入った原告らについては,被告Y3の任務懈怠がなければ,そもそも取引関係には入らなかったと認められるのであり,被告Y3がフォレックス社の取締役を辞任した後に,被告Y3の取締役在任中にされた勧誘行為とは全く別個の事情で上記原告らが取引を拡大させたとの主張,立証も認められないのであるから,被告Y3の取締役辞任後の取引に係る損害についても,被告Y3の任務懈怠と因果関係のある損害というべきである。
3 争点(3)(損害等)について
(1) 以上のとおり,フォレックス社の取締役であった被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,それぞれ商法266条ノ3第1項の責任を負うところ,それぞれの任務懈怠と因果関係のある損害は,原告らが投資をした金額の元本から利得を受けた金額を控除(損益相殺)した,元本欠損額であると解すべきである。
すなわち,原告らの多くは,本件の為替証拠金取引の中で利益配当を受け,また,U社破たん後,約3割の返金を受けるなどしている(甲全7,9,10,甲1ないし19の各1,21ないし38の各1)ところ,これらを控除した残額をもって,原告らが賠償を受けるべき損害額とみるのが相当である。
(2) 原告らの大多数は,フォレックス社の破産手続において破産債権の届出をしているところ,破産管財人は,1全債権者につき元本を基準として,損失の有無を調査して,利得がある債権者については,その利得額相当額につき異議を出す,2債権者であり,かつ普及員であった人物の届出債権については,各人が受領した手数料額について異議を出す,3上記の作業段階で同一人物であるか否かについて疑問があっても,管財人の調査手法によれば,同一である可能性が高いと判断された債権者については,原則,すべて利得額について異議を出す,4普及員の未払手数料については,本件事案の特殊性にかんがみ,全額異議を出すという方針で,破産債権の確定手続が行われた(甲全7)。
そして,破産債権について,破産管財人から異議が出されたのに対し,いずれも破産債権確定訴訟等は提起されず,確定していることが認められる(甲全16,乙全19,弁論の全趣旨)。
以上の事実によれば,本件における原告らの損害について,フォレックス社の破産手続において債権届出をした原告らは,破産手続において破産管財人から異議を出された金額については,前記(1)のような利益配当を受けるなどしているものと推認され,破産手続で確定した金額の限度で賠償を受けるべき損害額を認めるのが相当である。
さらに,これら原告らが破産手続において配当を受けた金額についても,これを控除する必要がある。
原告X5及び原告X32以外の原告らについては,フォレックス社の破産手続において債権届出をしている(甲全16,乙全19)ところ,証拠(甲全16,乙全19)及び弁論の全趣旨によれば,フォレックス社の破産手続において確定した同原告らの損害額は,別紙損害額一覧表の確定損害額欄のとおりであり,また,同原告らが同破産手続において配当を受けた額は同表の配当額欄記載のとおりであると認められる。
そして,同原告らのこれらフォレックス社の破産手続における上記破産債権の確定額に加え,証拠(甲全14,15,甲1ないし4の各1,6ないし19の各1,21ないし31の各1,33及び34の各1,35の1及び2,36ないし38の各1,原告X1本人,原告X4本人)によれば,上記各原告らは,フォレックス社の勧誘によりU社を介して外国為替証拠金取引を行うとのことで,U社に投資をし,これにより,上記のとおり別紙損害額一覧表の確定損害額欄記載の各損害を被ったものと認められる。
なお,原告X6について,被告らは,フォレックス社の破産手続において,確定債権額はなしと確定している旨主張する。
しかしながら,証拠(甲全16,乙全19)及び弁論の全趣旨によれば,原告X6(フォレックス社の破産手続における届出番号227番)については,別紙損害額一覧表の同原告の確定損害額欄記載のとおり,同破産手続において,債権額(損害額)が64万1485円と確定していることが認められる。
この点被告ら主張の別紙「フォレックス破産事件 配当額及び配当額を差し引いた損害額表」をみても,原告X6は,同破産手続において配当を受けているとされているのであり,このような同原告の確定債権額が0円であるとは認められない。
なお,上記証拠によれば,同破産手続における届出番号1088番の「X6」については,届出債権額全額について異議が出され,異議のない債権額は0円とされていることが認められ,被告らの主張は両者を混同したものと思われる。
(3)ア 他方,原告X5及び原告X32は,フォレックス社の破産手続において,破産債権の届出をしていない(甲全16,乙全19)。
被告らは,上記事実をとらえて,同原告らはフォレックス社から損害を受けておらず,したがって被告らに対する請求権も発生しない旨主張するが,破産手続において破産債権の届出をしていないことをもって,直ちに破産会社に対する債権を有しないものとみることはできない。
そこで,これら各原告について,以下検討する。
イ まず,原告X5について,同原告は,息子のM名義で取引を行っている,同一住所でN,O,Pの各氏名で取引が行われていることが確認されている旨主張する。
この点,原告X5に係る被害状況報告書(甲5の1)には,フォレックス社社員のQの勧誘により,平成14年11月1日に618万5865円,同月14日に1212万5848円の合計1831万1713円を同原告の口座から引き落として送金した旨記載されているところ,同報告書記載のフォレックス社社員による説明内容も具体的であり,原告X5が同報告書(甲5の1)に虚偽の記載をしているような事情もうかがわれないから,同報告書の記載内容は信用できるものといえる。
また,外国為替マージン売買取引代理人委任同意書(乙5の1の1)や為替マージン取引説明書を精読した旨の確認書(乙5の1の2)の署名は,P名ではあるが,原告X5と上記各書面に記載されたPの住所は同じである。
これからすると,原告X5は,フォレックス社の勧誘によりU社を介して外国為替証拠金取引を行うとのことで,U社に前記報告書記載の金額の投資をしたものと認めるのが相当である。
そして,原告X5は,上記報告書(甲5の1)において,利益配当は据置だったので受け取っていない旨記載するところ,同原告は,平成14年11月1日に最初の送金をした後,その約2週間後の同月14日に2回目の送金を行っているのであり,その間に1回目の送金に係る取引について利益配当がされ,それを2回目の送金に充てたとは認められないし,その他,原告X5が利益配当等利得を受け取っていたと認めるに足りる証拠はない。
他方,原告X5は,U社破たん後,595万3978円の返金を受けている(甲5の1)から,原告X5は,1235万7735円の損害を被ったものと認められる。
ウ 次に,原告X32について,同原告も破産債権の届出をしていない。
しかしながら,原告X32に係る被害状況報告書(甲32の1)には,フォレックス社社員のRの勧誘により,平成13年10月から,合計35万5000ドルをU社に送金した旨記載されているところ,同報告書記載のフォレックス社社員による説明内容も具体的であり,原告X32が同報告書(甲32の1)に虚偽の記載をしているような事情もうかがわれないから,同報告書の記載内容は信用できるものといえる。
また,原告X32は,平成13年10月30日付けの外国為替マージン売買取引代理人委任同意書(乙32の1の1)や為替マージン取引説明書を精読した旨の確認書(乙32の1の2)に署名,押印している。
これらからすると,原告X32は,フォレックス社の勧誘によりU社を介して外国為替証拠金取引を行うとのことで,U社に前記報告書記載の金額の投資をしたものと認めるのが相当である。
もっとも,原告X32は,U社破たん後,1200万4300円の返金を受けている(甲32の1)ほか,上記報告書(甲32の1)において,利益配当を更に取引に投入したことを自認しているところ,同原告が返金あるいは利益配当を受け取った金額については控除(損益相殺)する必要がある。
この点,原告X32が受け取った利益配当の正確な額は明らかではないところ,前記2(2)のように顧客はU社に外国為替証拠金取引売買を一任する内容となっていたことに照らせば,同原告が利益配当として受け取った金額は,同時期(平成13年10月ころ)に取引を開始した原告X18(平成13年11月28日開始。
甲18の1,乙18の1の1及び2)及び原告X19(平成13年10月24日開始。
甲19の1,乙19の1の1及び2)とほぼ同程度の割合であると推認できる。
そして,前記(2)のとおり,他の原告らが破産手続において届出をした債権額に対して破産管財人が異議を出した金額については利益配当を受けるなどしているものと推認されることからすれば,原告X18及び原告X19が破産手続において届け出た債権額と同原告らが破産管財人から異議を出された割合の平均値により算出される額をもって原告X32が受けた利益配当の額とみて,原告X32が投資したと認められる金額に上記割合を控除した残りの割合(上記2名の原告らに係る届出債権額に対する確定債権額の割合)を乗じて,原告X32が被った損害額を算出するのが相当である。
証拠(甲全16)によれば,原告X18及び原告X19に係るフォレックス社の破産手続における届出債権額と確定債権額は,原告X18が届出債権額1350万1384円に対し確定債権額1109万0093円,原告X19が届出債権額437万7871円に対し確定債権額369万1910円とそれぞれ認められるから,これら原告ら2名についての届出債権額に対する確定債権額の割合の平均は,約0.83となる。
したがって,原告X32が被った損害額についても,上記認定の同原告の投資金額3727万5000円(35万5000ドル。
原告ら主張の損害目録記載の換算額に従った。)からU社からの返金額1200万4300円を控除した2527万0700円に0.83を乗じて,2097万4681円と認めるのが相当である。
(4) 以上から,原告らの認定損害額は,別紙損害額一覧表の認定損害額欄記載のとおりとなる。
なお,原告X8,原告X9,原告X10,原告X11,原告X12,原告X13,原告X22,原告X27,原告X33,原告X37及び原告X38については,確定損害額から配当額を控除した金額が,同原告らの請求する損害金の額(同原告らに係る別紙損害目録の各損害金欄記載のとおり。)を超える(ドルでの投資額について原告らが採る換算率に起因するものと推測される。)ため,同原告らの認定損害額は,別紙損害目録の損害金欄記載の金額の限度で認めるべきこととなる。
また,各認定損害額の1割(ただし,1000円未満切り捨て)の弁護士費用を認めるのが相当である。
したがって,原告らの認容額は,別紙損害額一覧表の認容額欄記載のとおりとなる。
(5) したがって,各被告が各原告に賠償すべき損害額は,被告Y1については別紙認容額一覧表(1)記載のとおり,被告Y2については別紙認容額一覧表(2)記載のとおり,被告Y3については別紙認容額一覧表(3)記載のとおりとなり,被告Y1と被告Y2又は被告Y3の原告らに対する各債務は連帯債務の関係に立つ。
4 結論
よって,原告らの本訴請求は,上記認定の限度で理由があり,その余はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。

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